牛舎/草野春心
五月、
牛舎はくたびれて
立っているのもやっとのようだ
風のにおいはつんと饐え、
鍬があちこちで土に埋まっている
午後になり、積まれた干し草を
歯車みたいに食む牛たちも
時がくれば
あるものは売られるだろう
あるものは殺されるだろう
あるものは死ぬだろう、時がくれば
わたしたちは
軽自動車を路肩にとめて
金色の山並みを飽きもせずながめていた
きみの長い髪がわたしの胸を刺し
そのたびわたしの血液は鋭い痛みへと変わった
抱き合おう
落ちかかる夕暮れの光が
乾いて、ひび割れてしまう前に
睦み合おう
一刻もはやく
戻る 編 削 Point(3)