箱庭 五晩目 〜雨〜/黒ヱ
握る手 傘を持つ手 並んで 滴る中の相合傘
後ろのふやけた灯りが照らす
溜まりを打つ音に合い 泣き顔をしている
多くの降り注ぐものから 守れないのだから
「ひとり傘」 ひとり雨
「ひとり黙して」 ひとりぼっち
水が漏れる
遠くに伸ばす指の間から
絶えず 流れ落ちている
傘を持つ手がないのなら 僕が傘になろう
その言葉を待ってしまうのさ
「泣きながら落ちてくるのだもの」
また そうなろうとも
誰にも 誰かを責めることは出来ない
「愛したひとが泣いていた」
ひとりに疲れて 何も言えずに
「愛してくれたひとが泣いていた」
ひとり 空で
「
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