箱庭 五晩目 〜雨〜/黒ヱ
 
〜はるか遠くの 幼く可愛らしいお姉さんのお話〜

「これでおしまい」


触れず隠す それはまさに 「浅く深追いの指」
ぬめり 殻住みの歩み 「静かに音も立てず」
進んだ道の通りに 振り返りの目は二つだけ
それは寂しさ 
本当は そこには何があったのだろう

「誰か 教えておくれよ」


「愛したひとが泣いた」
声と声 交わした響きに また湿り気を帯び
想い蒔いている
「愛してくれたひとが泣いていた」

もうひとりで傘をさす事は出来なくて
礫が降る 仰ぐ曇天を受け止めてしまう

「さよなら」の声を耳元で聞く
別々の街で 同じ夜 同じ雨を浴びている

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