北の亡者/Again 2013皐月/たま
 
 田んぼ


乾いた田んぼに水が入って
追いつけないままに去っていった
春の詩をようやく諦める

花菖蒲は元気に咲いている
紫陽花もゆっくり色づいてゆく
発芽した朝顔は満員電車みたいに
ぎゅうぎゅう詰めだから
すこし間引いてやる
いつもと変わらない梅雨の入り

も吉もすっかり冬毛がおちて
午後のアイスクリームが
一番の楽しみ
最近はシニア用のドッグフードなんてのを
食べるせいかすこし肥えてきた
足腰はすっかり衰えたというのに
いつもの散歩道
ひと夏休んだ田んぼに水草のような
稲が並んだ
ああ、よかった と
よろこぶのはトンボや蛙だけじゃない
わたし
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