天牛と島の少年/壮佑
の茂みを掻き分けて行けば
そこはぼくらの眩い聖域
海風が昼寝をして
草いきれの立ち昇る荒畑に
自生する無花果の大樹
天牛は夏の乳房に抱かれて
葉っぱや枝に必死でしがみついて
乳白色の汁を吸う赤ん坊だ
黒い翅に星が散らばる髪切虫
驚いて飛んで行く奴は放っておいて
ぼくらは歓声を上げながら捕り続けた
袋代わりの帽子に獲物を詰め込むと
おとな達のいる白い建物へ行って
天牛の数を数えて小遣いをせしめる
幼虫が蜜柑の樹を枯死させるから
角のある頚を千切られた天牛への供物は
ラムネと甘イカと真っ赤なかき氷だ
「こんどはさかなをつきにいこうか」
家路につく前に ぼくらはもう
あしたの遊びのことを考えている
※天牛=髪切虫(カミキリムシ)の漢名。
※だいぶ以前に別のHNで投稿した作品の推敲・改作を試みています。
またこちらにUPさせていただこうと思います。(以後は特に記しませんが)
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