叢の日/ただのみきや
死に逝く間際
人は自らの人生を 遠く
心象風景として眺めると言う
ある者は石くれの丘に広がるぶどう畑を見た
長年の労苦のまだ見ぬ結実を眺望し
その芳香と甘さを味わうかのように
微笑みながら
ある者は広々とした麦畑を見た
風にそよぎ波打つ黄金の海
豊かな実りは満ち足りた心の現れか
その顔までもが照り返しで黄金に染まり
ある者は目を細め夜のオフィス街を眺めていた
事業を起こして数十年
山あり谷あり ついには成功を修めたものの
心残りが 無きにしも非ずか
やっとおれの番が来た
見えたのは 草の生い茂った空き地
まあ予想はしていた
何一つ成し遂げたことも
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