水と水/木立 悟
 





割れた橋から
差し出される手
何も映さない
水たまり


指の上
冬の川
霧のゆく先
池を伝う陽


外灯の裏の夜を歩き
晒されつづけるはらわたと骨
水路と水路のはざまの暗がり
はかりごとのように揺れ動く


蒼から蒼へ 吸い込まれる影
火花の森に昇る月から
小さな行方を手わたされる鳥
海を見つめて動かない


耳から光を追い出してなお
弦はどこまでもどこまでもまばゆい
息を吹き込めば吹き込むほど
冬は春のなかに増してゆく


花を運ぶ径は途切れ
風は茎から茎へと巡る
路地を塗る路地
音を音に足してゆく


[次のページ]
戻る   Point(4)