潮音、遥か/
佐東
・
夏のはじまりの声に
奪われた鼓膜は
透明の
セロファンに覆われた
巻貝の中で浮遊する
・
白い花びらの波に
さらわれた遠い渚で
掠めとられたくるぶし は
薄暑の縁どりで切りとられた
ひんやりとした青に
浸蝕される
・
骨密度の低下した
テトラポットの足跡を
途切れ途切れの
海鳥の
灰色の羽毛が
追っている
・
水に浮く
白い花びらは
青く透けて
海の名前を
忘れてしまった
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