蠅/はるな
 
あおじろい腹をうかべて魚たちが浮んでいる浮んでいる水
を引いた稲の緑が斑に褪せる褪せた色
の壁に凭れる男が胃の中のものを吐き吐き
捨てられた理想は街中に小高く積まれる


美しい世界で生きることを決めた



美しい世界で生きることを決めた朝
朝はま新しくとがって
とがった壁にもたれた男の吐き出す理想に
志をもった蠅がとまる

蠅は大きく旋回し
ふるえ続ける羽のゆらす空気が生ぬるい水をゆらし
あおじろい腹をうかあべて魚たちが浮かび上がるころ
この世界を
生きることを決めた


戻る   Point(3)