物語になってしまう/因子
祖母に忘れられる夢をみた。
夢のなかちいさな手を握り
かなしくて泣いていた。
かなしいと言って泣いた。
目がさめて
祖母はもうとっくの昔に私を忘れていることを思い出した。
ほっとした。
安心してまた寝た。
夢で私は悲しかった。
物語は美しい。
物語は美しく私を揺さぶる。
現実の祖母はただちいさく
生きて太っていき
言葉なく
触れることもなく
私はそのひとにかかる金のことを考えるばかりだ。
それでもいつか物語になろう。
このなまなましい無関心は
後でいくらでも物語に仕立てられよう。
最後の食事はロイヤルホストだった。
みな談笑していた。
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