帰る(五月雨降られ): 2013/AB(なかほど)
とおりに
ガタン ゴトン
君を思い出すために
僕も足をぶらぶらさせてみる
もう少しで降ってきそうだから
もう少しぶらぶら
もう降らないのかもしれない
もう降っているのかもしれない
東京出張の際にはいつも
千鳥町の駅近くの旅館に素泊まりをする
「観月」という名前は
大観が仕事宿として長逗留した折に
部屋から見えた月を愛でたことに由来する
らしい
その屋敷の鬱蒼とした
木立の合間から見える月よりも
その葉々に当たる雨音の方が
よっぽど いいよ
と言ったのは
幼い頃からその旅館前を通学路にしていた
君の言葉だった
田舎から進学のため上京した僕には
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