海の五月/佐東
緑の斜面で
息つぎしながら
遠くはなれて 青いしんこきゅう
くりかえすたび
さざ波
うまれては きえてゆく
五月の水際に よりそう
ゆるやかな
春の終わりを編みこんだ
つぎはぎの花房は
手のひらに あふれ出す
水平線につつまれて
夏の
おどる夢を みている
魚のかたちをした雲が
よこぎってゆく
雨あがりの まぶしいみちの上で
白いまき貝を 耳にあてて
名まえのない
波のうたをきいている
鼓膜は
波の底に置いてきたから
ね
ちゃぷちゃっぷんの話を
してあげる
わたし
ひき潮のあいだに
髪を梳かなければ
ならないの
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