棲魚 ?/アラガイs
かけたのは奇遇だった。
ある人たちからみればこの街の価値はとっくに失われているのに
高額の値札が張り付いたままになっていたのには驚いたにちがいない
どうしてもその日暮らしが自分には合わなかった
専門家によると新しい遊牧民の形態(かたち)だと言う
根付くことを意味しない彼らにはプライドがありすぎる
組み込まれ排出されたものが次第に理解きるようになってくると、いままで通じ合えたものが無意味にさえ思えてくる
彼は損な性分だった
(やはり生い立ちからきているのか)
ひとり暮らしには充分すぎるくらい慣れていた
はじめて知らない土地にやって来て
彼は孤独のなつかしさを思い起こしている 。
その昔
ひとは海の底に暮らしていた 。
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