棲魚 ?/アラガイs
 

潮の流れにまかせたまま
目的は回遊魚が釣りたかったからだ。
迷うことのない無色の水脈が苔藻の両面でぶつかり立ち止まるところ
こんな汽水域にもはぐれた奴の一匹くらいは居るだろう
餌さえあればどこだって生きられる
捨てられたコカ・コーラの壜は古い装いを変えた
(相手が居なければ戦争も始まらないのにね)
それは唐突な女の意見だったが、約束も交わさないうちに砂浜と消えた
中身の入った壜は重く沈み
底の見えない僕たちはこの先何世紀も後片付けに追われるだろう
月のない夜に煌めく鉛色の波面
小舟は櫓をなくしたまま何処かへと辿り着く。

NYの郊外でウォーホールのポスターをみかけ
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