博愛テニスラケット主義/カンチェルスキス
おれはいつもこうやって歯を磨く。どんなふうにかは教えない。みんなピッカピッカの歯でまぼろしの無人島を目指すから嫌になる。手を洗おうと思うんだけど、肝心の洗面所が部屋になくて隣の部屋の洗面所に向かうと、ハリウッド映画の出番待ちの俳優が狭い洗面所でカラダを洗っている。ずっと観察してたら、舐めたトローチで小粋にあんこ椿を奏でながら、振り返って、テニスラケットとこんにゃくサラダを持ってこいと言う。金鎖のネックレスはまるで一昔前の西武にいた不良外人助っ人のようだ。胸毛もすごいが、よく見たら化学の実験で燃やすアルミかなんかがのってるだけだった。あいにくおれはこんにゃくサラダは持ってなかっ
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