手のひら/寒雪
 

なにかが与えてくれる温度を
ただ失いたくなくて
かつて怒りが体に乗り移った時に
やけくそになって振り回したり
悲しみが膝まで襲ってきた時に
アスファルトを叩きつけたり
そうやって傷つけては
滂沱の涙を浴びせ続けてきた
ぼくの手のひらを
少しでもいいから
無事でいてくれと
守ってあげたくなった


時には重力に逆らうほど
地面にめり込んだりするけど
それでも
この重さを失うことが
ぼくの心の寿命を
息を吹きかけた蝋燭みたく
消し飛ばしてしまうから
ぼくは言葉通り懸命に
ぼくのこの手のひらを守ろうと思う
たとえ陳腐な恋愛映画みたいだとしても
それがぼくにとっての
ただ一つの答えだから仕方がないのさ

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