弌、弍、参/まきしむ
弌
禿げはじめ鐘の鳴る音を聞いてる
足の裏には死んだ虫
強く生きてね
こおろぎ達よ
丘の上
人の死骸が並んでる
小屋の前、森の中
囲む草花の先端に
淡く粉々の光っている
川の流れ
聞きながらキッチンで包丁を
扱っている君の臀部に
まとわりつく動物は霊長類
満月の出る昼ざかり
返すものはもうなくなった
ただ指の先端からこぼれる砂を
ひたと見つめ
風が吹くのを待っている
弍
海辺、砂浜
歩きながら輪っかを
胸の内にたくさん作り
バランスをとっている
陰を通る時
動物と
眼が合わないか
参
コンクリートの下
土の中で
硬くなって
目を閉じると
だんだんとしびれてき
境界が溶けてゆくので
桶を持って銭湯に行った
母との思い出をだき
足の指の爪を噛むと
もうなにもすることは
ありませんでした
ただ一音の無数の重なりが
土全体を震わし
ここまで届くので
倍音に耳を澄ませていると
いつのまにか淡い眠りに
ついているのでした
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