交差点でSuicaを握りしめたおじさんがトラックに轢かれて微笑んだまま死ぬ話/オノ
 
いい人だったので反省して予定より早く出所して、
それから一念発起して安い給料のところだけどまじめに働き始めました。
おじさんは最初の給料でSuicaを買って、娘のことを思い出すたびに
少しずつチャージしていきました。
生活するのでやっとだったから随分と時間がかかったけど、ある日
チャージした金額でとうとうSuicaが満額になったので、おじさんは
これを電車好きな娘にあげたらどんな顔をするだろうと思って、それ
だけでうれしくなって脇目もふらずに交差点に駆け出してしまいました。
そこへちょうど居眠り運転のトラックがやってきてすごいスピードで
おじさんにぶつかってきました。
そういうわけでおじさんは交差点でSuicaを握りしめて微笑んだまま
死ぬことになったのです。
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