僕、という立体/
佐野権太
不器用だから
泣きじゃくって
のりしろは全部
切り落としてしまった
僕、という立体を
通りぬけてゆく風
端っこがめくれて
ビラビラしている
無理しないでね、と
幻のような声を聞く
自分の意志で
食い止められるものならば
はめ込まれた一枚硝子の空
桜色の罫線
指先に
花弁を確かめるときの
なめらかな湿度を思う
立体の隙間から
かすかなものたちを
シナプスに取り込むための
深、呼吸
そうしてまた
僕がはじまる
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