サミュエル・テイラー・コールリッジ『クーブラ・カーン』(“Kubla Khan”)/春日線香
 
クーブラ・カーン
 あるいは夢の裡なる王土にて、断章

クーブラ・カーンは宣り給う
ザナドゥの地には歓楽の宮が建立されるべきであると。
聖なるアルフの流れが彼の地を潤し
人知の及ばぬ洞窟を抜け
地の底の海へと滾り落ちる。
斯くて十哩四方の肥沃な土地は
城壁と塔により劃されることとなった。
そこでは光に満ちた園を小川がくねり流れ
花は咲き乱れ、木々は甘く匂う。
周囲を太古の森と丘に取り囲まれ
王土はまことに輝ける有様である。

されど、ああ! 胸を戦慄かせるあの深い裂け目が
杉木立の丘を斜めに引き裂いて走っているではないか!
恐ろしい眺めだ! 神々しく、不思議と心惹
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