月と哭け/アラガイs
 

消したいのか取り戻したいのか
未来と言う名をつけたのは知らない
いくら石を投げつけても跳ね返ってくるのはわかっていた 。
それでも止められないのは閻魔と交わした契約だろう
予感と引きかえに閻魔は華やかさを手に入れる
金色に餌を啄む烏の群れ
この国ではそれを仕来たりと言うらしい 。

窓は奇妙な灯りで照らされていた 。
隠れる寸前の紅い月がこちらを伺っている
投げつけた石を哀れむように
、再びふり返ったときには既におちていた
それは懐かしい色味を帯びた、はじめてみる透明な紅い月だった
暗闇になれば透写された烏のその姿
影は戯れることもなく
、烏はふかいふか
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