湧歩道/村正
 
蛇口へとめぐる途中の

おだやかな息遣い

逆光の月が見たかった

色気のない一面の灰色には

歴史的なあかりは見えない

湧くのは水だけではない


木の根になって支えたい

無意識下のたとえ

心まわりの空回り

綺麗なものばかりみたい

その理由のせいでまた

夜より暗い影を落とす


忘れられない恩


同じ顔で同じ言葉を

同じ返事を返せなかった


コンクリートを蹴る音がした

逃げる音ではなかった


雑草にも朝がくる

露で泥が落ちる

どこか勇ましい

街灯より先に寝るための家路


雲の切れ間から夜空のチラリズム

感性はしばらく眠らない
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