まだ生きている人に向けた四章/破片(はへん)
 
れ立って横断する。歩き煙草を楽しみ道端に投げ捨てる。自らが出したゴミを完璧に分別する。世界はとても美しい。たった一人の人間にこれだけのことをさせるのだから。
 人が人を殺す時、その方法如何はあるにしろ、きちんと後悔する。世界はとても美しい。その後悔を失ってしまった、あるいは最初から持って生まれなかった人間には、相対した人が申し訳なくなるほど、社会生活、社交の場で礼儀正しく、また心配りと挨拶の能力を持たせるのだから。ぼくは職場での些細なミスを後悔したりしない。シリアルキラーやサイコパスが殺人を後悔しないからといって、人間として異常なことなどないのかもしれないと思う。人間が人間でなくなるときとは? 
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