渋谷。リップスティック。14歳。/いとう
初めて見かけたのは午後6時
センター街の陰でうずくまり
待つことを放棄しながら
背伸びをするリップスティック
名前は知らない
まだ明るい
これからの夜
1人でいる子を狙うほど
街の常連は馬鹿じゃない
スペイン坂を上るリップスティック
野良猫と捨て猫が交じり合う午後10時
君の若さはまだ
誰にも認知されずに
君さえも認知できずに
ふらつきながら身をまかせる午前2時
居場所をみつけたリップスティック
大きな音の流れる箱の中
澄みきった目を見開いて
真っ暗な水の底を探りながら
さしのべる手はいつも空回りで
おぼつかない痛みを絡みつかせて
浅くゆる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)