風/木屋 亞万
 
漠然とした砂の続く大地
平らな線が限りなく遠くに
つなぎ合わせればおそらく丸い

砂の山の起伏もさらなる飛翔の末
なめらかな肌になるのかもしれない
女の柔い背中の上を飛んでいる

細胞の一つひとつの核がぼこぼこと出張る
何一つ立ち上がるものはない見渡す限りに砂
なめれば甘そうな白は滑らかで

骨の粉末を血で浸したものを吹き荒らす風
むべむべと山風が故郷を失い錯乱すれば
ひりひりとした緊張のなか空気がかわいていく

あたらしい日を浴びて白けていく愛
砂嵐に埋もれてしまったテレビスターには
灰色のノイズ以外なにも残らない

風に戦いを挑んだ飛行気乗りは
無防備
[次のページ]
戻る   Point(5)