井戸の底にて /服部 剛
 
深閑(しんかん)とした井戸の底で 
今夜も私は、蹲(うずくま)る。  

遥か頭上の丸い出口の雨空に 
嵐はごうごう、吹き荒れて 
木の葉がはらはら、鳴っている 

遥か頭上の丸い出口を 
今日も他人の足は跨(また)いでいった――  
(何故、人の心はあんなに遠い…?)  

いつしか眠りに落ちた夢の中 
いのり重ねた両手の皿に 
濡れた葉が一枚、落ちてきた。 

仰いだ遥かな丸い穴にひかりは溢れ 
こちらを覗く黒い影が、私を呼ぶ 

「私はあなたに、会いにきた――」 







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