海/笹子ゆら
 

あなたが壊したものは
簡単なようで とても気難しく
わたしの手には負えない
静かなようで とても激しく
それは海のようだ


海であるということは
その内側にやどるいくつもの命が
見えないところで深呼吸し
見えないせかいを動かすこと
それを表すのは
常に波打つ水面だけ


この海が波立たなくなり
やわらかなあぶくが現れなくなったら
わたしは一体
あなたは一体どうなるのだろう


こうして呼吸をするように
塩辛い水はゆらゆらと揺れ
生き物たちと呼応するように
激しく生きる
海は 生き物のようだ
そこにことばは要らない


どうしてだろう
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