海/笹子ゆら
あなたが壊したものは
簡単なようで とても気難しく
わたしの手には負えない
静かなようで とても激しく
それは海のようだ
海であるということは
その内側にやどるいくつもの命が
見えないところで深呼吸し
見えないせかいを動かすこと
それを表すのは
常に波打つ水面だけ
この海が波立たなくなり
やわらかなあぶくが現れなくなったら
わたしは一体
あなたは一体どうなるのだろう
こうして呼吸をするように
塩辛い水はゆらゆらと揺れ
生き物たちと呼応するように
激しく生きる
海は 生き物のようだ
そこにことばは要らない
どうしてだろう
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)