luck-lack/Debby
 
ある朝のことを、君たちに話そう。
文体のことは考えないでほしい、それはけっして
と言いかけたときに
船出の音がした、なめらかな櫂が
長い時間に晒されて
すり減ってしまったきみたちの
船出の音がした
ある朝のことをもう一度
はなし始めよう

ぼくはきっと、それほど長くはここにいないし
君がいなくなった世界のことだって
想像するのは難しくない
くりかえし、喪われ、寒い朝には涙さえ出た
風の音がした
もうずっと遠くなってしまった

ちっちちち
ちっちちち
こういうふうな、音で
山を一つ越えた向こうで
リズムが続いている
青い色をした飛行機が、暗い空でとんぼを切
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