そしてきっと、引きちぎる/凍湖(とおこ)
 
したを向いていると
ぼたり、ぼたり、服に
投下されていく、くろい染み。
先ほどまで、ぼくのたいないにあったイオンと水分。

ここは電車のなか。
花粉症に紛れて
涙腺が稼働しているのを、こっそり感じている。

窓のそと、ペールブルーをバックに、うす桃色のかたまりが、うしろへうしろへ、ながされていく。
よく晴れた儀礼的無関心。
電車のなかは、「社会的空間」です。

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群れのなか
ぼくらの視線と視線のあいだに定められた
暗黙の境界線を握りしめ
力いっぱい、引き伸ばす。唐突に。
相当の覚悟を持ちながら。
境界線が、ゆるゆるのパンツのゴムみたいになるまで。

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