うつくしみの うつつ/木屋 亞万
心地の悪い衣服に身を押し込めれば
心も引き締まる気がして
まさぐられてもいない手への嫌悪感と
たゆまない愛の忠誠に包まれ眠る
「駿河なる宇津の山べのうつつにも夢にも人に逢はぬなりけり)(新古今集 羇旅)(伊勢物語九)
或る女はウツという途方もない山辺で
ゆううつにうつつを抜かし
入れ子状の夢の戸を開けては迷う
真夜中の森林を掻き分けて
人間すらいないところで
運命のたった一人を追い求める
川に腕をつけて打つ手を洗い出しては
少しでも清い夢へと体を浸す
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