あなたと私/yamadahifumi
 
私が誰かなら私は誰でもない

誰かが私なら私は誰でもない

誰かが私であって

私は誰でもない

だから、私は私じゃない

なのに、こうして呟いている私はここにいる

それはデカルトが見つけた「私」と同じ事

六十億人いるこの世界の星の数ほどの人の群れに紛れて消えても

その中に見えない私がいて

その私は、今ここで叫んでいる私の姿

それが私

でも、私は誰にも出会う事ができない

もし、あなたが自分の存在を一度も見失ったことがなくて

心からの叫びを一度も発した事がないのなら

即ち、あなたはどこにもいないのだから




      ※講談社文芸文庫「さようなら、ギャングたち」にのっている谷川俊太郎の詩を多少参考にしました

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