失格三昧/ただのみきや
切り者として失格
焼け焦げた殉教者の遺体として失格
飛び込む蛙のガギグゲゴとして
時雨れる蝉のザジズゼゾとして
やわらかく熟した欲望の発音として
巡回説教者が振りかざす貴金属バットとして失格だ
割烹料理屋の切り裂きジャックのように
歯科衛生士の口裂け女のように
枯れ木に立小便する酔っぱらった鼻裂け爺さんのように失格だ
病室のベッド脇に残された蒼い罌粟とはなれず
白く覆われた棺の上の一本の紅い薔薇ともなれない
一粒の転がるらっきょうとして
はっとして見つめる花豆として
昔の人として
今の人として
未来人として失格だ
獣としても失格だ
妖怪変化としても失格だ
枕としても失格だ
シェルターとしても失格だ
毒薬の小瓶としても失格だ
どこかに消えた税金のように
いかさまカードみたいに失格だ
太宰君と仲良く人間失格だ
失格という言葉に酔いしれる
失格者としても失格なのだ
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