大誤殺峠/和田カマリ
 
えい、尋常に勝負せよ

後ろ向き逃げ惑う奴らを二人三人、続けて刺し貫いた

ついに本懐を遂げた父

荒々しく髪の毛を掴んでグイと手繰り寄せた

「かあちゃん。」

それはすでに殺されたはずの母

あわててもう一人チェックしてみると

「息子よ。」

血まみれの俺がいた

だとしたらもう一人は

「わしじゃ。」

「わしがわしを!わしの家族を皆殺しにしたのじゃ。」

きりがないので誠心誠意お詫びする事にした父

傘を広げると、パッと担ぎ上げ大見得を切った

「アイヤ、すまぬわいや〜。」

「成田屋」

客席から声がかかった

俺たちも立ち上がると、次々に睨みを利かせ始めた

満員のお客さんは、もう大喜び!

新春大歌舞伎の新作、「大誤殺峠」

初日は大成功のようだった



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