幸福/吉岡ペペロ
 
すすめた相談員のお姉さんは

事件に巻き込まれて死んでしまう

お姉さんはその事件担当の刑事の恋人だった

刑事の同僚は奥さんに逃げられて

ふたりの子供と三人で暮らしている

その暗い映画を見つめながら

ぼくは幸福について考えていた

幸福とは状態のことではない

幸福を見つける能力のことだ

そんな中学生らしい頭でっかちなことを

こころで口にしながら見つめていた

あのころぼくはさびしかった

じぶんを置いてきぼりにして

ひとはこころを目まぐるしく変えてゆく

みんなぼくより大人で

みんなぼくより我慢していた

そして世の中をうまく生きていた





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