幸福/吉岡ペペロ
すすめた相談員のお姉さんは
事件に巻き込まれて死んでしまう
お姉さんはその事件担当の刑事の恋人だった
刑事の同僚は奥さんに逃げられて
ふたりの子供と三人で暮らしている
その暗い映画を見つめながら
ぼくは幸福について考えていた
幸福とは状態のことではない
幸福を見つける能力のことだ
そんな中学生らしい頭でっかちなことを
こころで口にしながら見つめていた
あのころぼくはさびしかった
じぶんを置いてきぼりにして
ひとはこころを目まぐるしく変えてゆく
みんなぼくより大人で
みんなぼくより我慢していた
そして世の中をうまく生きていた
戻る 編 削 Point(5)