幸福/吉岡ペペロ
中学生のころ
幸福という映画を観にいった
当時映画といえば二本立てで
アモーレの鐘というのが同時上映だった
あのころぼくはさびしかった
じぶんを置いてきぼりにして
ひとはこころを目まぐるしく変えてゆく
みんなぼくより大人で
みんなぼくより我慢していた
そして世の中をうまく生きていた
でもひとは理不尽で残酷で
ぼくのことが疎ましそうだった
どんなに意地悪なひとよりも
ぼくの評判のほうがずっと悪かった
幸福は暗い映画だった
知恵おくれの妹を妊娠させた実の兄
妹は堕胎手術の失敗で死んでしまう
堕胎をすす
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