塗り潰せ/雅寛
先生、教えて。
僕等、拒む棘を舐め合ってる。
先生、教えて。
幼さ故に、ナイフを抜き差してる。
先生、教えて。
美しい、夜と夕方の境界を。
先生、教えて。
深い夜の色の邪さを。
先生、教えて。
僕等が好きだった夕方の見上げ方を。
先生、教えて。
破り捨てた教科書に書かれた卑猥な落書きを。
先生、教えて。
その背徳の裏に書かれた純粋を。
先生、教えて。
あの子と違う愛情と、ぬくもりを。
先生、教えて。
教壇の上では見せられない姿と欲を。
先生、教えて。
知らないで済んだ、欲と。
先生、教えて。
知らなくてはいけなかった欲と。
先生、教えて。
あの子と蜜を垂れ流す部屋の虚無と。
先生、教えて。
教えられなかった事を、その正しさを。
先生、教えて。
あの子と手探りで探した膣と、
先生、教えて。
無知故、味わえたあの思いを、もう一度……。
先生、教えて。
嘘でも、本当でも、僕等が信じた、真実を……。
真っ黒に、埋め尽くされた、便箋が、浮かんでる。
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