桜の散った街を往く/木屋 亞万
 
さくらのさく
みちをゆく
いつもよりあかるい
ひざしもつよい
いろはあざやか
ぬくもるからだ

つよいかぜがふいて
やわいかぜもおきて
さくらはさそわれる
どちらのかぜにのるか
ひとつひとつのたびだち

さくらのきよい
まほうにかかり
まちはいつもより
きよらかになる
つめたいものはさり
あたたかいものがくる

うまれかわるよ
まちも
しぜんも
もちろん
わたしも

うまれるときはなくものだ
くもがもくもくあらわれて
こまかいあめがふりだすと
えだをはなれて
ちりゆくさくら

かなしみがかわくまもなく
えんえんとあめはやまない
つぶつぶのちいさいあめが
せんさいなあおばを
しっとりつつみこむ

そだつ
あたらしいものたちが
ぬれながら
てらされながら
そだつ

さくらちるまちをゆくくも
さようなら
そだつたびに
うしなっていくのだね
ほらこいみどりになり
なつをまつくさ
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