Echo Wreck/木立 悟
海岸には 誰もいません
本が落ちていました
文字も絵も無く
ただ幾重にも
波のかたちに濡れていました
銀河は
人々のなかに散ってしまいました
姉は最初からいません
だからもう
返事を書かなくてもいいのです
(一度きりのあやまち)
前髪を切れば
世界は滅ぶのだから
曲がり角のむこうを
畏れなくてもいいのです
守れなかった
何を と聞かれても
わかりません
ただ みんな
離れていったのです
数秒前のことが
昨日のことのように刺さります
帰り路ばかりが
境いめを埋めながら
延びてゆきます
色は何処
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