社会科学と文学/葉leaf
認識は、文学自体に対する認識も増すであろう。
さて、人間は様々な規範に従って生きている。人間の倫理というものは人間の実践そのものであり、倫理を規定しているものとして代表的な法は、倫理のひな形として、人間の実践を明らかにするのに役立つ。法学は法の構造を解明することによって人間の実践の構造をいささか誇張した形で説明してくれる。さらに、法は制度や社会を規定することによって、そこに向き合う人間、そこに所属する人間の在り方も明らかにする。法に従い法に対峙する人間、という見方は、文学の行いにおいても役に立つに違いない。
つまり、社会科学は、人間の私的な在り方を明らかにすると同時に、公的な空間の構造を明らかにすることによって、公的な空間と対峙し公的な空間を内面化している人間の在り方を明らかにし、さらには個人を超えた社会の存在に目を開かせてくれる。人間は社会的な動物であるのだから、人間を描く文学もまた社会性を備えていると望ましい。文学が社会性を備えるにあたって重要なのが、文学者が社会的な自覚を持って社会科学をそれなりに修得することであろう。
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