ゆうやけこやけでまたあした/笹子ゆら
 
{引用=
パイプオルガンの音が聞こえたので、わたしはおうちに帰ることにする。夕刻、絵の具で塗り立てのような空は、燃えているけど燃えてはおらず、慕情は生まない。たいしたもんではねえや、と誰かが囁く。わたしもそんな気がしている。


ゆうやけこやけでまたあした、さようなら、さようなら、またあ、あしたねえ。


そうやって、誰かと手をふりふり、歩いて帰ったような気がするのに、その誰かは思い出せず、そのあかいろで染まった顔は、なんだかやっぱり、うつくしくはなかった。
夕陽のあかをうつくしいとおもうのは、あたりまえのこころで、わたしはあたりまえではないのだから、仕方がないのだと、下り坂、石を
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