文車妖妃/佐々宝砂
妬ましきをみなの名を
記しては破り、
願へども叶はぬ懸想を
綴りては破り、
執心こめたる玉章(たまずさ)を
文車(ふぐるま)に納めしをみなは
西方(さいほう)へ去りて久し。
されど消えやらぬはことのは、
あやしきかたちを成し
我が枕に語りき。
我ふぐるまにのみ住むにあらず、
紙無くとも文在る處(ところ)必ず我在り、
ゆめならずと覺(おぼ)へよ、
今汝が前に在るは妖妃(ようび)也。
(未完詩集『続・百鬼詩集』収録予定の「女妖たち」より)
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