k市(氏)の瞑臘/アラガイs
雲を追いかけていたような気がする
ただひたすら前を歩きながら
舗装のない足もとの
小さな虫たちにおびえていたような気もする
物差しで綿布団を測った
緑藻に染まる透けた手のひら
岸辺から波止に滴る海牛の重さよ
魚の瞳が開かれた瞬間
やがて聴こえてくるものの一部をつきやぶり
すいかずらの根っこのようなものが生えてきて
泣き声に立ち止まれば遠く耳鳴りのなかで
わき上がる煙が街を造り変えていく
電信柱と背中にかかる影の長さ
鹿の子らが籠る茶の間にいそぐ夕暮れ
黙視に霞む山々のざわめき
…鳶色と戻る道も近く
片輪をぬかるみから踏み出せば
もう傷口を舐めあうこともない
此方では
、よだれ掛けの下にも潮溜まりの雨がふる 。
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