心の化石/ただのみきや
真っ赤な林檎の皮をするり剥きますと
白く瑞々しい果肉が微かに息づいて
頬張れば甘く酸っぱく
口いっぱいに広がっては
心地良く渇きをいやしてくれるのです
そのおんなもまた
高い梢に輝いた美しい林檎のようでしたから
多くの者が憧れ慕っておりましたが
その枝をたぐり寄せもぎとったものは他ならぬ
夜盗のごとく装った己が運命にございました
愛しいおとこに裏切られ
信じていた全てのことがらがまるで
揃いも揃って踵を返したかのように
陰惨たる不条理の濁流
岩をも刻むその激流に翻弄されて
やさしさや
なごやかさ
よろこびや
かんようさ
甘く柔らかな果肉はみな削られ
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