彼岸の日に/殿岡秀秋
家族でテレビを観ているときに
死んだらどうなるかという考えに
急に抱きつかれて
子どものぼくは立ちあがった
狭い家の中を
歩きまわる檻の中の熊
家族は画面に気をとられて
徘徊に気づかない
からだが燃やされたら
骸骨のほかに何も残らないのか
それとも形を変えて
残るものがあるのか
もしかして宇宙には
無数の生物が生きて死んで粒になって
生き返るのを待ちながら
闇に隠れて浮いている
場所があるのではないか
いくら考えてもわからなかった
あの日テレビを観ていた両親は
すでに亡くなり
孫までできたぼくは
父の好きな日本酒を手に墓参りに行く
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)