彼岸の日に/殿岡秀秋
 
家族でテレビを観ているときに
死んだらどうなるかという考えに
急に抱きつかれて
子どものぼくは立ちあがった

狭い家の中を
歩きまわる檻の中の熊
家族は画面に気をとられて
徘徊に気づかない

からだが燃やされたら
骸骨のほかに何も残らないのか
それとも形を変えて
残るものがあるのか

もしかして宇宙には
無数の生物が生きて死んで粒になって
生き返るのを待ちながら
闇に隠れて浮いている
場所があるのではないか

いくら考えてもわからなかった

あの日テレビを観ていた両親は
すでに亡くなり
孫までできたぼくは
父の好きな日本酒を手に墓参りに行く

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