軽トラ生い茂る/灰泥軽茶
軽トラが農地の空地に
放置されて顔だけになっている
車輪は地中に埋まって
後ろの荷台は錆びてもげて
かろうじて面影を残すのみ
緑の雑草や蔦が生い茂り
うす紫色の花がたくさん綺麗に咲いている
運転席を覗いてみると
今の軽トラよりうんと小さくて
小さなお爺さんがたばこをくゆらして
ラジオを流しており
小さなお婆さんがちょこんと湯のみで
お茶をすすっている
周りを見渡せば
似たような軽トラがとまって
近くで作業をしていたり
山あいの小さな農道を
あちらこちらへと走っている
あと何十年かしたら
この埋もれた軽トラも
自分の役目は終わったことに気づくだろうか
そのうち何か違う役目を
おうことになり居続けるかもしれない
ヘッドライトは仄かに光り
私はその場所をあとにする
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