Being/草野春心
 


  透明な石になりたかった
  あなたのからだを
  ただ
  通過するだけの



  暴かれることのない
  巧妙な嘘になりたかった
  ひとのこころのくらがりに
  重たく腰をおろして
  けれどもそれでいて
  あなたが一つマッチを擦れば
  その明かりで照らし出されるような



  冷たい水を飲むあなたの
  喉のあたりがうごいている
  夕暮れの光は、あなたの髪に虫のように群がり
  硬質な羽をぴくぴく蠕動させる
  どんなときでもわたしでいたい
  あなたのこころのくらがりに
  こっそりとしゃがみこんで



  
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