透明人間と/たもつ
 


カチャリ

自動券売機で切符を買う透明人間
都会ではひとりでにコインが宙を飛んでも
誰も驚かない
ありがたいことだ、と透明人間



【透明人間の思い出】

写真たてには空ばかりの写真
ここに自分がいて
そのとなりに恋人がいて

今、雲が笑った?

いや、思い出と名のつくものは
いつでも気まぐれに振舞うものだ



【透明人間の願い】

透明人間も
透明ではない人間も
幸せでありますように





【さよなら】

私のノートから
透明人間がいなくなった

それは突然に、というより
透明人間が足の方から
徐々に消えていく感覚

風でノートがめくれる

「さよなら」

の文字

以降、空白のページ



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