指と兎/草野春心
 


  きみの親指と
  ひとさし指の間を
  一羽の兎が往復している



  冬の夜がするどい針金を張る
  白い煙がきみから蕩け
  それからあわ立ち、
  草原を艶(あで)やかに濡らしてゆく
  言葉は魂のかたちに切りとられた



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