アトリエのブルー/まーつん
この胸の内側から
際限なく 湧き出してくるから
カンバスの上はいつも
描きかけの未来図を塗りつぶす
透き通った青一色で 厚く覆われている
それは
遠浅の海の色 黎明の空の色
命を育む揺りかごと
始まりの無を暗示する
冷気と暖気の対流を孕んだ
美しき微睡みの色
湧きいずる流れは
チョロチョロと床に注がれて
今や 裸足のくるぶしをも
浅く 冷たく浸していて
紙くずや 食べ物の器が
ぷかぷかと あたりを漂っている
そのブルーな感情は
いずれ 俺が溺れ死ぬまで
この心から漏水し続けて
止むことはない
閉ざされた密室で
己の憂鬱に窒息して
精神の死を味わったとき
俺は
目もくらむ光の中で
新しい自分を手に入れて
目を覚ますことだろう
そうして
ドアを破って溢れ出す
碧き流れに尾を打ち振る
一匹の魚となって
このアトリエを
泳ぎ去るにちがいない
戻る 編 削 Point(13)