ファウル/平瀬たかのり
 
 ユニフォームのボタンがはじけ飛びそうな
 六番バッターがぶるぅんとひと振り
 キッツン
 やあ、スイングだけはホームランだ

 いまやたかだかのんびりと
 打ち上げられた軟式球
 ラインを過ぎて 
 フェンスを超えて
 ぼくの手元まで届いてくれないか

 そのままぎゅっと白球を握りしめたら
 ぼくはひといきに逃げだそうか
 それとも
 川向こうはるか、思いきり放り投げてから
 散らばるナインをふり返り笑おうか

 ほほえみのサードが青空見上げて
 オーライの声も誇らかな
 由緒ただしき日曜日の朝
 土手の上、ぼくはひとり
 どうしてファウルは邪飛なんて訳すのかな
 なんてことを考えて
 詩を思っている日曜日の朝


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